こんにちは、魚屋「中村商店」の仲買人、仲買達人(なかがいたつと)です。
鳥取・賀露港では活の良いズワイガニが水揚げされています。ズワイガニのオスを鳥取では「松葉がに」、メスを「親がに」と呼んでいます。(※親がにの漁期は、資源保護のため11月〜12月です。)同じズワイガニでも店頭に並ぶ松葉がにと親がにではサイズが大きく異なります。小柄なせいか親がには特に敏捷。水槽から逃げ出すこともよくあります。
オスとメス、なぜこんなにサイズが異なるのでしょうか?
実は稚ガニおよび未成熟ガニでは成長に雌雄差はありません。甲幅6cm台でいずれも10齢となります。カニは脱皮した回数で齢期をカウントしますので、10齢とは、10回脱皮したということです。
カニは、最終脱皮をすることで成熟(大人)となります。オスは主に11齢(11回脱皮)から最終脱皮後の個体が出現し始めます。最終脱皮後の個体の割合は11、12、13齢でそれぞれ約5%、約20%、100%となります。このようにオスは最大13回まで脱皮を行いますが、メスはすべて11齢で最終脱皮となります。
つまりオスとメスのサイズの違いは、脱皮の回数の違いによるもの。11齢(生後8年)というと、甲幅7-8cm位の大きさです。オスはその後も成長を続け、大きなものだと甲幅15cmにもなります。日本海で漁獲された中には甲幅18.7cmもの松葉がにが確認されています。ちなみに、脱皮して間もない松葉がにのことを鳥取では「若松葉がに」と呼び、区別しています。若松葉がにの漁期は2月のみ。店頭で販売しますが、水分が多いため「かにみそ」は食べません。
販売されているカニの大きさ別の目安としては、甲幅12cm未満が12齢(3月を誕生日とすると若松葉がには生後8年、松葉がには生後9年以上)、甲幅12cm以上が13齢(若松葉がには生後9年、松葉がには生後10年以上)という具合になります。最終脱皮かどうかは、体サイズに対する鉗脚(ハサミ)の大きさで判断することができ、鉗脚が太いものが成熟個体となります。
脱皮の時期は通常、夏から秋にかけてですが、遅延で冬期に脱皮するものや、1年スキップするカニも見られます。この脱皮遅延しているカニが1月あたりに見られる「二枚皮」です。
二枚皮は脱皮直前のカニです。脱皮と脱皮後のエネルギー確保のため、かにみそに当たる中腸腺(肝膵臓)がもっとも発達していますので、身はそれほど入ってはいませんが、かにみそはタップリと濃厚です。かにみそ好きにはたまらない魅惑的な個体、初めて見られた方はとても驚かれます。
さて、ズワイガニの名前の由来は、細く真っ直ぐに伸びている小枝という意味の「すわえ」からきているとも言われ、そのすらっと伸びる歩脚が特徴的です。では、その脚の長さを気にされたことはありますか?
実は海底地形や底質により、脚の長さや太さが異なります。同じ鳥取県内でも、「隠岐北東から鳥取沖の松葉がに」は比較的脚が長い松葉がにが多く、「隠岐北西は少し太短い脚の松葉がに」となります。その要因は、底質の泥の深さが影響しており、泥深いところほど、カニは泥に体が沈まないよう脚が伸びるようです。
生育環境や状況によってそれぞれに見た目や大きさが異なるのは天然のものだからこそ。店頭の水槽などでそれぞれの個体を見比べる機会がある方はぜひ一度じっくりとご覧になってください。ただし購入後は茹でたものでも、おいしさを味わうために出来るだけ早めにお召し上がりください!
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