ちょっとした居酒屋や和食のお店で前菜や先付として小鉢に品よく盛り付けられた「黒バイ」。かわいい見た目と爪楊枝を刺してくるりんと殻から出す楽しみ、そして凝縮された旨味と磯の香りは何とも言えない幸福感を味わえます。
春から夏に旬をむかえる「黒バイ」は、浅瀬を住みかにする濃い茶褐色をした斑紋のある巻貝です。6cm程度の大きさで、よく知られている白バイや赤バイより小粒です。身は筋肉質で旨味が強く、ワタも苦味やえぐみが少なく濃厚な味わいが楽しめる貝です。一昔前と違い、近年では漁獲量の減少から高級食材として扱われています。
黒バイは鮮魚市場で購入できますが、「自宅で調理すると身が固くなるという」お客様の声も聞かれるため、柔らかく美味しく煮付ける方法を馴染みの料理人さんに尋ねてみました。
下処理や加熱時間にコツがあるようで、ポイントは〈さっと短時間煮る〉か〈じっくり長時間かけて煮る〉ということでした。中途半端な加熱時間が身を固くさせてしまうそうです。
〈下処理〉
(1)ボウルに黒バイ(300g)を入れ、塩(大1~2)を振りかけ数分置く。身が動き出しぬめりが出たら流水で洗う。ここでしっかりと擦り洗いすることでヌメリと臭みが取れる。
(2)鍋に黒バイ、水(黒バイがしっかりかぶるような量)を入れ中火で加熱。沸騰後2分経ったら流水でよく洗う。
〈さっと短時間煮る場合〉
(1)煮汁(水100㏄、酒50㏄、しょうゆ大2、みりん大2)を作り、下処理をした黒バイを入れて中火で5分煮る。
(2)そのまま自然に冷まし味を含ませる。
〈じっくり長時間かけて煮る場合〉
(1)鍋に下処理をした黒バイ、だし昆布、一口大に切った大根を入れ、黒バイ+大根の倍量の水と酒(水の1割)を加えて火にかけ、沸騰後弱火でアクを取りながら1時間ほど煮る。
※大根を加えることで黒バイが柔らかく仕上がります
(2)しょうゆ、みりんを味見しながら適量加え、更に30分煮る。
(3)そのまま自然に冷まし味を含ませる。
調味料の分量は各家庭のお好みで調節してください。しょうゆは白だしや薄口しょうゆを使うと上品な仕上がりになります。
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