「オジサンって魚がいるの知ってる?」というCMが流れていますが、「ばばちゃん」って魚がいるのはご存知でしょうか。
「ばばちゃん」の学名はタナカゲンゲ。鳥取県の沖合底びき網で水揚げされる三大珍魚のひとつです。以前は岩美町の漁師さんが自分たちで食べるか、行商のおばさんが港近傍の家庭に届ける程度で、店頭にほとんど出回ることはありませんでした。それが今や、鳥取市のお隣の岩美町内の特産品「いわみ八宝」のひとつに選ばれ、鍋料理は岩美町の民宿の定番料理となっています。
愛称である「ばばちゃん(ばばぁ)」はその見た目からで、正面から見ると顔の雰囲気がお婆さんの顔によく似ているというところから来ています。ちなみにこの魚、ばばちゃん以外にもその見た目から、漁師さんや地域によってはキツネ(ダラ)、なまずと呼ばれています。それほど見た目のインパクトが大きいです。
水深200~500 mの海底にいる深海魚。隠岐諸島周辺海域では、特に水深200~250m付近にいることが多いと水産試験場で教えてもらいました。松葉がに(ズワイガニ)の漁期である11月~翌年3月に、おおむね1㎏以上の大型魚を中心に県内で約20トン程、水揚げされます。不思議なことにこの魚、幼魚のうちは全身トラ柄のような横縞で、親とは別種と見間違えるほど。比較的小型が多いゲンゲの仲間なのですが、大きなものは全長1mにも成長します。
鱗はなく、皮は厚くしっかりしています。この皮が少し厄介で、よく「ぬめり」を取らないと臭みが残ってしまいます。ただ、塩もみ等でしっかりぬめりさえ取れば、身はクセのない白身で、身離れもよく、鍋、揚げ物、煮魚といろいろな用途で使え、おいしくいただけます。呼び名に反して身はプリプリで、そのおいしさと、滅多に出逢うことのできない幻の魚ということで、他県では「幻魚(げんげ)」と呼ばれるようになりました。幻の魚「ばばちゃん」は一度出会ったら、忘れられない魅惑的なお魚なのです。