帰宅時にふと耳にした虫の声? 秋ではないし、空耳かな?と思いましたが、聞こえてくる「ジーーー‥‥」という長い音。姿は見えず、動いている気配も感じられず、ただただ聞こえる音。調べてみると、初夏に鳴く虫もいるようです。
気温が上がるにつれ、生物の活動は盛んになります。それは海の生物も同じ。虫編の漢字を持つ岩牡蠣も産卵期がはじまります。牡蠣は「蠣」だけでも「カキ」を意味するのですが、古代中国ではカキは全てオスと考えられていたため「牡」の文字をつけ、「牡蠣」と表記するようになったと言われています。確かに、殻では見分けがつかないですね。
水深15mほどのところに育つ岩牡蠣は、外敵から身を守るため殻がとても頑丈です。こじ開けようと思ってもそう簡単には開きません。恨めしく岩牡蠣の殻を見ると表面は凸凹で、何層にも重なり合っています。岩牡蠣は薄い殻を1枚ずつ重ねて成長するそうです。
しかし、生まれた時から殻があるわけではありません。「松葉がに」と同様に卵から孵化すると幼生となり、ふわふわ海の中を漂いながら、次第に透明で薄い殻を持つようになるのです。そして、お気に入りの岩場などを見つけるとそこで稚貝となり、徐々に岩のように姿を変えていきます。
岩牡蠣はその場で「ジーーーー」っと動かず、プランクトンを食べて大きくなります。ほとんど動かないため、筋肉は退化し内臓が発達。上質なプランクトンが生息している場所で育つほど、身(ほとんど内臓)は、大きく柔らかくなり、あの独特の食感がうまれます。旨味が凝縮されるのもゆったりと育っているからこそ。夏にだけ見ることができる鳥取の天然岩ガキ「夏輝(なつき)」、漁期は6月〜8月です。