イカの女王「白イカ」 | 株式会社中村商店
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2022年08月26日イカの女王「白イカ」

こんにちは、魚屋「中村商店」の仲買人、仲買達人(なかがいたつと)です。今回は鳥取県では夏が最漁期の「白イカ」について話します。

鳥取県で「白イカ」と呼ばれるイカは、標準和名をケンサキイカと言います。同じ学名(Uroteuthis edulis)で、9月ごろから漁獲され始める季節型のブドウイカもまとめて「白イカ」と呼んでいます。ケンサキイカの地方名は白イカ以外にも、赤イカ、マルイカ等を耳にしたことがあります。皆さまのお住まいの地域では何イカと呼ばれているのでしょうか。

イカの名前は、正直相当ややこしいです。余談ですが、鳥取ではヤリイカのことを「けんさき」とも呼びます。このため、ヤリイカ→けんさき→ケンサキイカ→白イカという間違いが起こってしまうことがあります。また、福井県等ではケンサキイカのことを「アカイカ」と呼ばれますが、鳥取で「赤イカ」とはソデイカのことです。さらに標準和名にアカイカを持つイカを、鳥取では「紫イカ」と呼びます。全国の話になると、とても混乱しますね。

さて、話を鳥取の「白イカ」に戻します。鳥取で白イカ漁といえば、鳥取県の海を彩る夏の風物詩とも言われる「漁火(いさりび)」が紐づきます。漁火とは、夜に魚を誘うために漁船で焚く火のこと。現在では、L E Dなどの集魚灯によるものですが、明りが等間隔に並ぶ様はとても幻想的です。イカは灯りに集まると言われます。しかし、実は灯りの中ではなく、船影や、灯りに集まる小魚より少し深いところにいるんですよ。明るいところが好きなわけではないのです。それは、「白イカがよく釣れている時に急に明かりを落とすと、海面に白イカが浮かび上がり、船が白イカの大群に取り囲まれる。」といったことからもわかります。

そんな浮上してきたイカを網ですくうのではなく、明かりを灯した状態で漁師さんは一本釣で漁獲します。1~数杯のイカを丁寧に手上げしていきます。竿とリールを使い、置き竿が基本ですが、巡回しながらたまにしゃくって誘うパターンでイカを釣り上げます。リールなどない時代には、グラスファイバー製の指揮棒のような「はじき」に太めの釣り糸と疑似餌をつけたものを船縁に610セット用意し、これを巡回しながら手繰りで釣り上げていました。漁場の見極め力は、漁師さんの技の一つ。そして、手返しの速さ。その速さには目を見張るものがありますよ。
 

最後に、イカに関する鳥取発祥の技をひとつご紹介します。鳥取墨なし白イカ「白輝姫(しらきひめ)」をご存じでしょうか?

釣った白イカの墨袋を船上で除去する技術を、鳥取県水産試験場が編み出し、鳥取県の漁業者限定で技術指導したことで生まれました。身を傷つけることなく墨袋を除去するにはコツが必要で、中々に手間がかかるため、数量が限定されますが、購入された方からは「シンク、まな板が汚れない!!」といった高評価をいただいています。船上で墨袋を取り除くことで鮮度も美しさも保ちやすくなります。「調理中に真っ黒な墨が出て、手やまな板だけでなくイカの身についた墨を洗い流すといった手間が省ける」というのは体感すればするほど嬉しいものです。ご希望の方は当店(中村商店)へご連絡ください。

日本近海に200種類もいると言われるイカ界の【女王】とも称される白イカの食感とその甘みはとても評判が高いです。加熱しても硬くなりにくく、様々な料理で活躍しますが、やはり何と言っても刺身で食べられることが多いです。

刺身は言うことなしの美味しさなのですが、イカは冷凍との相性も良いです。魚や肉と違い旨味が落ちることがありません。白イカの胴を開き、皮を取った状態でラップし、これをフリーザーバッグに入れて密閉し冷凍保管すれば、後日、流水解凍してパッと刺身にすることもできます。高タンパクで低脂質、しかも美味しい。一夜干しにしても最高ですよ。

 

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