イカ墨は、古代ギリシャ語でsepia(セピア)。セピア色の語源となったと言われています。イカの墨は、ペンや筆にもにまとわりつきやすく、文字や絵を描いたり印刷にも使用されていました。高濃度で使用すると真っ黒。しかし紫外線などの影響で色が薄くなり茶色に退色しやすい性質があります。
この性質が「イカサマ」という言葉を生んだと言われていることをご存知でしょうか。イカサマとは、インチキとかペテンなど、小細工をしていかにも本当らしく見せかけること。
その語源・由来は諸説ありますが、「イカ墨の性質を知った悪い人が、茶色の借用書にイカ墨で文字を書き、借りたお金をだまし取ったことから、イカ墨が転じてイカサマになった」という説には驚きました。
イカ墨の黒い色素成分は、「メラニン」。人間の肌や毛髪、瞳の色などに影響を与えている色素としてメラニンをご存知の方も多いことと思います。イカの墨は粘り気が強く、海の中では黒い塊のように漂います。イカは墨を「分身の術」のように活用して逃げるのです。
イカと比較されることの多いタコの墨は粘度が低く、海の中で吐くと煙幕のように広がります。いずれも墨袋の墨は体内で生成されているのですが、タコの墨は体内から取り出しにくいうえに量も少なく、他の用途に使用されることが少なかったのでしょう。タコサマという言葉は生まれませんでした。
イカ墨や内臓などを取り除いた白イカは、透き通った美しさです。甘みが強く濃厚な味わいが人気で「イカの大トロ」とも呼ばれる鳥取県産白イカ。ダマされたと思って一度お召し上がりください。