夏休み目前、暑い日が続きますが朝夕に堤防で釣りなど楽しまれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。鳥取港近辺では今の時期アジやカサゴを釣ることができます。カサゴは、見た目も特徴的で釣り人には馴染みの深いお魚ですが、カサゴのそっくりさんをご存知でしょうか?
おそらくそっくりすぎて多くの方はカサゴだと思われているかもしれません。この魚、 その名も「ウッカリカサゴ」です。
この「ウッカリ」とは、「ぼんやりしてとか、注意不足でついうっかり」の、うっかりです。そんな副詞が名前についたお魚、「さぞかしボーッとしたお魚なのか?」と思われるかもしれませんが、うっかりしていたのは人間なのです。
1978年まで日本では魚類学者を筆頭にウッカリカサゴの存在に気付いていませんでした。新種と発表したのは、ソ連の魚類学雑誌が最初で、日本ではその翌年に魚類学者の阿部宗明(あべ ときはる)氏が著書『新顔の魚』の中で「ウッカリカサゴ」と標準和名を命名されました。
当時、「うっかりするとカサゴと区別しないことになる」と、この名前を付けた理由を述べ、マスコミのインタビューに対し「日本の魚類学者が気付かずうっかりしていたため、ウッカリカサゴと命名した」と説明されたそうです。
それほど詳細に分類する必要もなかったのかもしれません。鳥取県の統計でもごく最近まで「うっかり」ではないですが、カサゴとウッカリカサゴが混在した形の「カサゴ類」、もっというと「メバル・カサゴ類」で報告が上がっていたため、漁獲量が分離されていませんでした。
鳥取の漁師さんもカサゴの地方名の「ぼっかぁ」で一括りにされることもありますが、ウッカリカサゴは「沖ぼっかぁ」と呼ばれます。ウッカリカサゴは沖の深場(水深70~100m)に多いから「沖」が付けられています。
その他の違いをあげるとすれば、ウッカリカサゴはカサゴより大型になるほか、胸ビレの軟条(なんじょう)の数が19本あり、カサゴの18本より1本多いです。あと、体表に散在する白い斑紋にも違いが見られます。
ポイントさえ押さえれば違いは明確。ウッカリカサゴは、30〜50cm程度まで成長します。白身魚で脂のノリもよいお魚です。特に丸ごと煮付けにするのがオススメです。40cmぐらいのサイズだと、1尾でも家族4人が楽しめます。うちの家族はみんな好き。ヒレの根元はもちろん、頭なんかも分解されて、ホント骨だけになっちゃいます。小骨がないので、小さな子どもやお年寄りも安心。うっかり見過ごすことのできないお魚です。