モサエビと私 | 株式会社中村商店
あげ・そげ・こげ あげ・そげ・こげ

あげ・そげ・こげMEDIA

2021年03月26日モサエビと私

モサエビとの出会い

私が初めて「猛者(モサ)エビ」なるエビに出会ったのは25歳の時。今から24年前のことだ。

当時私は地元の青果物卸売市場で働いていた。昼の弁当を食べて場内でくつろいでいると、なじみの八百屋のおばちゃんが、「ヒロシく~ん、このエビ、とってもおいしいけえー、食べてみんさい」と、頭の黒くなった10尾ほどのエビを差し出してきた。

私は「いいだか?ありがとう」と言って、そのエビを受け取ろうとすると、「500円」と言ってお金を要求してきた。タダでくれるものだと思っていた私は、心の中で、『えっ?こんな黒くなりかけたエビに500円払うのか』と思いながら渋々500円をおばちゃんに渡した。

「どうして食ったらうまいだ?」と聞くと「そのまま、刺身で食べてみんさい、モサエビっちゅうおいしいエビだけー」とおばちゃん。『えっ?刺身で?頭黒くなってるし、見るからにこれは刺身で食べれるような感じではない。お腹壊さなんでなー』と思いつつも醤油とわさびをつけ、恐る恐る食べてみた。

『( ゚Д゚)!う、旨い!!食感はもっちりしていて、とても甘みがある!口の中にエビの濃厚な味が広がっていく』

25年生きてきてあんなに旨いエビを食べたのは初めてだった。さっきまで500円を取られたことが心のすみに引っ掛かっていたことなど、この1匹のエビが一瞬にして払拭してくれた。それからすぐ、残りのモサエビに一気に貪りついたのは言うまでもない。

 

中村商店にて

モサエビは足が速いため(鮮度劣化が早い)、なかなか県外など遠方の地域には出回らないエビである。漁獲量も多くはなく、「幻のエビ」と言っても過言ではない。ただ、近年は活きた状態でセリ場に並ぶようになったため、県外流通も可能となり、全国的にもその知名度は上がってきている。

買い物にいらしたお客様に、モサエビの美味しい食べ方を聞かれることがある。刺身で当日中に食べるというお客様には、私は頭の黒くなりかけたものをお勧めする。

ほとんどのお客様は、「黒くなりかけてるけど刺身、ホントに大丈夫?」と、自分と同じように一緒のことを聞く。

あの24年前に味わったモサエビの旨さをお客様にも知っていただきたいから、あえて私は、【当日中にお刺身で】と言われるお客様には、鮮度の高いものは勧めない。値段ばかりが高くて自分が食べて美味しいと思わないから。そして鮮度の高いエビより安価でお求めいただけるから。そしてまた店先で、私は明日も頭の少し黒くなったモサエビをお客様に勧めていくのだ。

TO PAGE TOP