モサエビの旨さの秘密 | 株式会社中村商店
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2023年04月07日モサエビの旨さの秘密

こんにちは、魚屋「中村商店」の仲買人、仲買達人(なかがいたつと)です。鳥取県内で猛者えび(モサエビ)を知らない人はいないエビですが、県外の方はこの名をあまりご存じでないように思います。

モサエビの正式名称は、クロザコエビ。何と言っても味が抜群、愛すべき食材の一つです。その味の秘密は、うま味のグルタミン、甘みのアラニン、弱い苦みでコクを出すアルギニンという成分を多く含んでいるからです。中でも注目すべきは「アルギニン」。これはカニの仲間に多く含まれる成分で、火を通すと、モサエビはカニのような味わいが感じられます。つまり、刺身で甘エビよりも甘いエビの味を堪能し、焼いてカニ風味まで楽しめると、甲殻類好きには堪らない最強の食材なのです。煮ても、みそ汁にしても、素揚げしても旨い! 塩焼きしたモサエビの殻をむいた指まで舐めてしまうおいしさです。

モサエビの生態について、ここで少し触れておきます。主に水深200-230mの深海に生息するエビジャコ科に属するエビです。シャコと科名にありますが、姿が似ているというだけでシャコとは生物学的に異なる生き物です。日本周辺では日本海、北部太平洋、オホーツク海と広く分布し、海底の泥に含まれる有機物や小さな生物を餌にしています。

モサエビの外見的特徴は、額角が棘程度と短く、両目が前に飛び出した愛嬌のある顔をしているところにあります。1月〜3月は産卵時期で、おなかに1.5mmほどのエメラルドグリーンのきれいな卵を約1600個も抱えます。

最新の調査研究では、甘エビ同様にモサエビも「雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)」といって、小さいときはすべて雄で大きくなると雌に性が転換する可能性があるとされています。漁獲対象となるサイズのものは、すべて雌。抱卵期間も長いため、店頭では子持ちのエビ(外子エビ)を見かけられると思います。

ここで、外子エビの方がお得だと思ったあなた、半分正解で半分間違いです。カリッと塩焼きした場合、確かに、外子がおせんべいのように香ばしくなります。そして、刺身ではプチプチ触感が素晴らしいです。しかし、外子を持っていないエビの中には、頭胸部に内子を持っているエビがいるのです。この内子、雌のズワイガニ(親がに)同様に濃厚な味わいで、焼きエビ、煮エビの時には、内子のあるなしで一喜一憂してしまうほどです。ご購入の際は、鮮度が良いエビですと頭胸部内に透けて見える緑色の内子にも注目してみてください。

この旨さが県外であまり知られていない理由は、大きく2つあります。1つ目は鮮度落ちが早く、産地近郊でしか食べられない「幻のエビ」だから。近年、専用のエアレーション付きの発泡スチロール魚箱を用いた活エビや、漁獲後すぐに船上で急速冷凍させた「冷凍モサエビ」が出てきているものの、主たる流通は鮮魚扱いになります。

エビの仲間は死ぬと「自己消化」と言って、自分の身のたんぱく質を酵素で分解してしまいます。数日でアミノ酸の酸化による黒変が起こり、頭胸部が黒くなり見た目は悪くなります。ただ、たんぱく質はアミノ酸に分解されると、うま味が増します。食べていただくのに絶妙なタイミングがあるのです。「やっぱり、どれを選んだらよいか分からない!」という方は、当店(中村商店)にお気軽にご相談ください!

 

 

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