こんにちは、魚屋「中村商店」の仲買人、仲買達人(なかがいたつと)です。コオロギを使用したお菓子が販売されるようになってきましたが、その味はエビのような香ばしさが特長と言われています。エビの味って、魅惑的ですよね。
今回はホッコクアカエビについて話します。ホッコクアカエビ(北国赤海老)と書くと北国でしか獲れないエビのようですが、ベーリング海、アラスカ湾などの北太平洋だけでなく、日本海でも漁獲が多いエビです。山陰でも水揚げされているんですよ。
実は、ホッコクアカエビは、通称「甘エビ」のこと。お刺身で食べると、とろけるような甘みがあるため、広く「甘エビ」と呼ばれるようになったと言われています。
春はホッコクアカエビの産卵期です。産卵は2年ごとで、抱卵期間は約11か月。大型のメスは6千個の卵を抱えるものもいるんですよ。3月前後(2〜4月)に水深250m程度の浅場に移動して産卵し、ふ化した卵は浮遊幼生となり、プランクトン生活を行います。成長とともに深場(水深400m前後)へ移動し暮らします。そして産卵期になると浅場に移動し、産卵後はまた深場に戻るといった生活を11歳位まで続けます。
ホッコクアカエビの卵は、直径1mm位の小さな粒々。薄い青色をしています。普段あまり口にされない青色だと思いますが、新鮮なものはそのまま食べることもできます。プチプチ食感の卵は、醤油などで少し味をつけるとより楽しんでいただけることでしょう。
ここだけの話ですが、水揚げされたホッコクアカエビを見ていると、鳥取・網代船の「エビ愛」を一番感じることができます。何と言ってもダントツに色が良いのです。船ごとにプライドを持って活きのよいエビが出荷されるので、「色良いですね~」っと、船頭に声をかけると、「だろうぉ」と言ってニコッとされます。色の良さは、温度管理、乾燥防止がポイントで、船上での素早く正確な選別が、色の差に表れると思っています。
ホッコクアカエビの甘みはグリシン、アラニンといったアミノ酸によるもので、獲れて半日ほど経過すると甘みが感じるようになります。これはタンパク質が適度に分解されトロッと柔らかくなることで、甘味成分が舌に残りやすくなるからです。ちなみに鳥取が誇るエビ「モサエビ」の甘みは、グルタミン、アラニンといったアミノ酸によるもので、少し味わいが異なります。食べ比べるとわかるので、この時期に鳥取に来られたならば、どちらも食べていただきたいです。言わずもがな、どちらも本当に美味しいですよ。
頭のミソも新鮮なものであればすすって食べられます。味噌汁にすればエビの旨みで豊かな一品に。頭の部分を唐揚げにすれば、サクサク香ばしくとまらない、やめられないです。某スナック菓子の原料でもあるエビだからこそでしょうか。余すところなくいただけます。
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