心地よい秋風と澄みわたる秋空に清々しさを感じる10月に入りました。
店先ではひと際目を引く大きな「赤イカ」を始め、底引き網船や小型船から水揚げされる多種の旬の魚介が並びます。その光景に心ときめく日々ですが、シーズン出始めによく使われる『新物』と『初物』という言葉。似たような二つの言葉にどのような違いがあるのか調べてみました。
読み方で意味が違います。
(1)「あらもの」
・新しいもの、新しく作ったもの
・生の状態のもの(解凍などしていない)。新鮮なもの
(2)「しんもの」
・新しいもの。特に歌舞伎狂言や音曲などの新作もの
(出典:精選版 日本語国語大辞典)
意味からすると(1)の「あらもの」と読むのが正しいようですが、魚介を扱う業界では「しんもの」と呼び、新しい生の旬の食材という意味として使うことが多いようです。「新物〇〇〇」と表記されているのを見かけることもあるのではないでしょうか。
旬の走り、季節の最初にとれる魚介や野菜・果物を指します。魚で言えば「初鰹」「初鮭」が広く知られています。「初物七十五日」のことわざがあるように「初物を食べると、七十五日長生きできる」と言われ、縁起が良いとされています。そのことから「初物食い」と呼ばれ、初物を好んで食べる文化が浸透しています。
今の時期、筆者のイチオシは「新物ハタハタ一夜干し」です。確かな技術をもった従業員が一尾ずつ手作業で加工し、無添加の一夜干しに仕上げています。黄金色に輝くハタハタは美しく、ほどよく脂がのった身はふっくら焼き上がり、とても美味しくいただけます。当店自慢の一品です。
あと1ヶ月もすれば鳥取県が誇る冬の味覚、松葉がに漁が解禁となり『初物』の松葉がに、親がにが水揚げされます。『初物』を食べて長寿を願うとともに、時節の縁起ものを食べて季節を感じ、心豊かに過ごしましょう。