穏やかな日差しに心地よい風、芽吹く草花のにおい。体いっぱい春を感じる季節となりました。入学、新社会人、進級、栄転と新たな門出に胸膨らませ新生活を迎えられた方も多いのではないでしょうか。
親の立場から言いますと、子供が成長するのは本当に早いですね。母の後ろに恥ずかしそうに隠れていた子が自分で何でもできるようになり、自立していく姿は嬉しくもありちょっと寂しいような複雑な気持ちになります。
魚の世界では稚魚から成魚になるまでの間、成長に応じて呼び方が変わることがあります。『出世魚』と総称される魚たちです。中でも代表的なのが「ブリ」。地域によって様々な呼び方がされていますが、地元鳥取では「ツバス」→「ハマチ」→「マルゴ」→「ブリ」と呼んでいます。
魚は大きさにより肉質や脂のノリ、旨味が違うため商品価値が異なります。同じ魚でも「ハマチ」と「ブリ」では扱いも値段も違います。もちろん調理方法や美味しい食べ方も変わってきます。異なる名前をつけることで漁師、業者、消費者が分かりやすく利用しやすいようになっているんですね。
他には「スズキ」「サワラ」「ボラ」などの『出世魚』が有名で、聞かれたこともあるかと思います。
では、なぜ『出世魚』と言われるのでしょう。
江戸時代まで武士や学者は成人すると名前を幼名から大人の名前に改め、社会の仲間入りをすることを祝いました。また地位が上がる、世間に名を知られる身分になるなど、出世の折々で身分に応じた改名をする風習もありました。
そういったことから、成長して名前の変わる魚は『出世魚』と呼ばれるようになり、縁起の良い魚とされるようになりました。
『出世魚』はお祝いの席や贈り物として使われるのはもちろん、立身出世を願うという意味を込めてお節料理の焼き物にもよく使われます。人生の節目である大切な日には、大きな成長を願い縁起物の『出世魚』でお祝いしませんか?