松葉がには、山陰地方で呼ばれている蟹の呼び名です。ズワイガニの成長した雄のことを「松葉がに」と呼びます。ズワイガニの雌は雄に比べてとても小さく、「松葉がに」とは区別して取り扱われます。松葉がにの長い脚にはぎっしりと身が詰まっていて、甘くて上品な味が特徴です。
「松葉がに」と呼ばれるようになった名前の由来は諸説あり、どの説が正しいのかは分かっていません。松葉がにの名前の由来として言われているのは、「細長い脚の形が松葉のようだから」「カニの殻を取って水につけると身が広がり松葉のように見えるから」「松葉の落ちる季節に獲れるから」「漁師さんがカニをゆでる時に松葉を集めて燃やしていたから」というような説が挙げられています。「松葉がに」の名称は、天明2年(1782年)には既に使われており、鳥取藩の公文書控え内で記載が発見されています。
松葉がにの漁期は、11月〜3月。その中でも最も美味しくいただけるのが12月でしょうか。実際に12月になると松葉がにの売上も増えると言われています。これは、松葉がにが12月に一番美味しくなるということではなく、寒くなってきて鍋を食べたくなる時期に、旨味が詰まった松葉がにを食べることで、より美味しく感じられるからではないかと言われています。そのため11月〜3月の松葉がにであれば、比較的味に変わりはありません。
価格に関しては、11月や3月のほうが安くなると言われていますが、これは松葉がにの質の問題ではなく、漁獲量と購入する人が多いかどうかということに関係しています。特に12月や1月は年末年始もあり家族全員が集まる機会が増えるため「みんなで美味しい松葉がにを食べよう」という気分になるのでしょう。しかし冬の日本海は時化ることが多く12月になると漁獲は減少傾向になりがちです。需要と供給のバランスが崩れ、価格にも影響を及ぼします。
松葉がには、ズワイガニの雄のことです。ズワイガニの生息地は北太平洋沿岸、オホーツク海から日本海のほぼ全域となっていて、とても広範囲です。しかし、これらすべてを「松葉がに」と呼ぶわけではありません。松葉がにと呼ばれるのは、山陰地方の日本海で生息しているものだけです。水揚げも山陰地方の日本海側であること。生息地域と水揚げ地域の条件をクリアしていなければ「松葉がに」とは呼ばれません。
松葉がにの価格相場は、1キログラムあたり1万8千円から3万5千円くらいと言われています。しかし、カニの大きさや形、身の付き方など様々な条件でランク分けされて値段がつくため、これよりも高くなる場合もあれば、安くなる場合もあります。また、生で新鮮な松葉がにと、冷凍の松葉がにでは価格も変わってきます。松葉がには、水揚げ量によっても価格が変動するため、毎日価格が異なると言えるでしょう。ズワイガニの雌は雄よりもサイズが小さいため価格は安くなります。
松葉がにの見た目や味にはどのような特徴があるのでしょうか。
松葉がにの甲羅には、黒い粒がついていることがあります。この粒は、カニビルと呼ばれていて生き物の卵嚢です。黒い粒はとてもグロテスクなので、なにか悪いものなのでは?と不安になる方もいますが、実はカニビルの卵嚢がついているほうが美味しい松葉がにと言われることがあります。粒ががたくさん付いている松葉がにのほうが美味しいと言われている理由は、粒が多いほど脱皮した後の期間が長く、しっかりと成長し身が詰まっていると考えられているからです。
松葉がには、身がしっかりと詰まっています。食べるととても甘みがあって上品な味わいです。身が詰まっているので、弾力があり食べ応えのあるカニです。そして、松葉がにの味噌はとても濃厚です。上品な味わいの松葉がには、様々な食べ方で楽しむ事ができます。焼きがににすると、松葉がにの香ばしさや香りも楽しめます。レモンをかけるとカニの美味しさがさらに引き出されます。
松葉がにの甲羅を剥がして、かに味噌を甲羅に入れて蒸し焼きすれば、かに味噌本来の味を楽しめます。濃厚な甘さと香ばしい香りそしてほのかな苦みは、お酒にもよく合うでしょう。甲羅酒を楽しまれる方も多いです。
松葉がには刺身も絶品です。生のカニはとろけるような甘さがあります。口の中で溶けていく感じを楽しんでみてください。柔らかな食感で美味しくいただけるのは、蒸しがにです。
そして、松葉がにと言えば鍋は外せないでしょう。かにすきは、かにの旨味を引き出せるようにシンプルなだし汁で作るのがおすすめです。一緒に入れる野菜にも旨味が染み込んでいきます。鍋の後は、雑炊やうどんで松葉がにのエキスを余すことなくいただいてください。松葉がには、どのような調理法にも合うので、色々試してみましょう。
松葉がにとズワイガニは、カニ類の「ケセンガニ科」で「ズワイガニ属」となっています。どちらも同じカニとして分類されているのですが、ズワイガニ属はさらに細分化されていて、国産のズワイガニの中に松葉がにが含まれています。
名前を変えて呼ばれている理由は、生息地や産地の違い、流通時期の違いがあるからです。松葉がには、生息地や水揚げ産地が限定されているのが特徴です。山陰地方の日本海に生息しているズワイガニで、水揚げ産地も山陰地方の漁港でなければ松葉がにとは呼べません。
ズワイガニは、日本海全般に生息していますので、松葉がにと呼ばれるエリア以外で生息、水揚げされた場合はズワイガニ又は他の呼び名で呼ばれることになります。また、松葉がには、資源保護のため11月〜3月のみ漁がおこなわれるのでそれ以外の時期は基本的に店頭に並ぶことがありません。
ただし、冷凍販売されている場合は、流通時期以外に購入できる場合もあります。しかし、冷凍された松葉がにと活きた松葉がにでは、味わいが異なりますので、美味しくいただくならやはり新鮮なものをお選びください。
松葉がには、山陰地方での呼び方で、他の地域では松葉がにとは呼んでいません。では、他にどのような呼び名があるのでしょうか。
福井県の漁港で水揚げされている雄のズワイガニが「越前がに」と呼ばれています。福井県では、雄のズワイガニが「越前がに」で雌のズワイガニが「セイコガニ」と呼ばれています。
日本で最も古くからズワイガニ漁をされていた地域が福井県と言われています。室町時代に京都に住んでいた三条西実隆の日記によると1511年に「越前がに」について記されていたことから、この頃から福井で水揚げされたものが、京都に届けられていたと言われているのです。また、皇室に献上されたカニも「越前がに」だったとされています。
間人ガニは、京都府北部にある丹波半島の間人港で水揚げされるカニだけの呼び名です。とても新鮮なカニと言われていて、漁港から1時間半あたりの場所に好漁場があることから、鮮度抜群のカニが水揚げされています。身が詰まっていて形や美しく、ずっしりとしたカニは、地元の宿で提供され、宿泊客だけが楽しめるこだわりの味となっています。間人ガニは、幻のカニとも呼ばれています。その理由は、漁獲する漁船が5隻しかないからです。また、天候により海に出られないこともあり、いつでも獲れるわけではありません。1回の漁で獲れるカニは少ないことから、幻のカニとなっているのです。
加能ガニは石川県の漁港で水揚げされている雄のズワイガニの呼び名です。「加賀」と「能登」から1文字ずつ取って名付けられたと言われています。石川県では、雄のズワイガニを「加能ガニ」、雌のズワイガニを「香箱ガニ」と呼ばれています。鳥取県では厳しい基準をクリアした最高級の松葉がにを「五輝星」と呼んでいますが、石川県では最高級の加能ガニを「輝」と名付け、販売がはじまりました。
ズワイガニは、雄と雌でも呼び名が違います。山陰地方ではズワイガニの雌を「親がに」、「セコガニ」と呼ばれています。雄と雌の見分け方は、お腹を見ると分かります。ひっくり返してお腹を見ると、お腹にある筋の形が違います。雄は三角形をしていますが、雌は半円形をしています。また、大きさも異なります。雌は雄よりも甲羅が小さいです。雌には、卵巣や卵があるので、珍味が好きな人に特に人気です。親がにを丸ごと使用した「かに汁」もとても親しまれています。親がにの漁期は、資源保護のため鳥取では11月〜12月のみとなっています。
ズワイガニの雄、脱皮したてで成長しきる前のものは、鳥取では、若松葉がにと呼ばれています。甲羅がやわらかく水分量が多いため、ミズガニ、若ガニ、ズボガニなどの呼び名もあると言われています。若松葉がにの漁期は2月のみ。親がに同様季節限定で楽しまれています。
松葉がにについて詳しくご紹介しました。松葉がには、ズワイガニですが、細かく言うと異なるということが分かりましたね。地域によって様々な呼び名があり、また同じズワイガニでも雌と雄では呼び名も味わいも異なるということで、食べ比べしてみたくなられたのではないでしょうか。松葉がには、11月〜3月が旬となっています。美味しい松葉がにを食べるには、どこで購入するのかということもとても重要です。新鮮な味わいを届けてくれるカニ専門の通販サイトをご利用になってください。