先日、セリが始まる前のことだった。今日はどんな魚がセリ場に並んでいるか、ぶらっと見て回っていると、活魚水槽の中でゆったりと優雅に泳ぎ、宝石のように紅に輝く、ひときわ美しい魚を発見した。
ボクは、彼女に一目惚れをした。彼女の側から離れたくなくて、高値をつけてセリ落としてしまった。
彼女の名前は『エビスダイ』
ガラス質の硬い鱗を身にまとい、鉄壁のディフェンス体勢。そんな彼女にどうやって近づき、気を引けば良いのだろう?
そこでボクは、彼女の事をこっそり調べてみた。
『エビスダイ : あまりまとまって取れない魚。味はいいが、鱗などが硬く取り扱いにくいのが難点。誰もが扱える魚ではない。硬すぎる鱗の内側には透明感のある白身があって、非常にうまい。知る人ぞ知る味のいい魚』
(引用:ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑)
ちょっとやそっとでは、なびいてくれない。誰もが上手に扱えるわけではないらしい。やはり、彼女に好かれるのは一握りのイケメンさんなのだろうか…。
そんな彼女は今日も店内活魚水槽で優雅に泳いでいる。
もし仮に、来店されたお客様が「彼女をください。」と言っても、ボクは断ろうと思っている。
片思いでもいいので、もう少し彼女と一緒にいたいから。
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