知れば怖くない「アニサキス」 | 株式会社中村商店
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2023年11月17日知れば怖くない「アニサキス」

こんにちは、魚屋「中村商店」の仲買人、仲買達人(なかがいたつと)です。秋に水揚げされたサバを「秋サバ」。冬のサバは「寒サバ」と呼ばれ、脂がのり栄養もたっぷりと言われますが、山陰地方で水揚げされるマサバは年間を通して脂のノリに大差は見られません。いつでも安定して美味しいです。

しかし、アニサキスによる食中毒の報告が絶えないのが気になるところ。今回は「アニサキス」について紹介します。敵のアニサキスを知れば対処は可能ですので、くれぐれもサバ嫌いにはならないでくださいね。

厚生労働省が公開している食中毒統計資料によるとアニサキスによる食中毒は、昨年の2022年には566件と前年に比べて200件以上も増えています。その中でもシメサバやサバの刺身などサバが関与した事例が最も多いのはとても残念なことです。

アニサキスの怖さ

アニサキスは寄生虫で、線虫の一種です。その幼虫は、長さ2~3cm、幅は0.5~1mmくらいで、白色の少し太い糸のように見えます。これが胃壁や腸壁にブスリっと入るのですから、想像しただけでも痛いですね。元アイドルが「出産より痛い」と動画公開されていたこともあるので、その怖さをご存知の方もいらっしゃることでしょう。

胃壁や腸壁にアニサキスが穿入すると、激しい痛み、悪心、嘔吐を生じます。また、アニサキスの抗原と人の胃壁が接触することでアレルギーが生じ、蕁麻疹、気管支喘息、重篤な場合はアナフィラキシーショックを起こしてしまうこと場合もあります。

アニサキスの種類

食中毒を起こすものだけでも数種いると言われていますが、代表的な2種をご紹介します。

(1)アニサキス シンプレックス(Anisakis simplex
このシンプレックス、太平洋側に多いアニサキスで、温度が上がって内臓から身に移動する個体は10%ぐらい。つまりは、食中毒を引き起こしやすいアニサキスです。シンプレックスはミンククジラ等のクジラの胃壁に寄生し、卵は排泄物と一緒に海中へ排出されます。

(2)アニサキス ペグレフィ(Anisakis pegreffii
こちらは日本海側に多い種で、温度が上がって内臓から身に移動する個体は0.1%ぐらい。つまりは、食中毒を引き起こしにくいアニサキスです。ペグレフィはバンドウイルカ等のイルカの胃壁に寄生し、卵は排泄物と一緒に海中へ排出されます。

いずれも卵の中で第1、2期幼虫になり、海中で孵化した第2期幼虫は中間宿主であるオキアミに摂取されます。オキアミに食べられて第2期から第3期幼虫となり、次にサバやイカなどの魚介類に食べられて、ここでは第3期幼虫のまま状態で寄生します。

従来、日本海側には少ないと言われていたアニサキス シンプレックスが令和に入ってから行われた調査で、日本海産マサバで多数見つかるようになりました。そのサバやイカなどを人が食べて「痛い!」っとなるわけです。人の体の中は居心地が悪いので、体内で成虫になることはありません。

アニサキスの対処方法

1.鮮度の良い魚を選ぶ
温度が上がると内臓から身に移動しますので、まずは良く冷やし込まれて、ちゃんと冷温で管理されている魚を選びます。

2.生で内臓を食べないこと
アニサキスは内臓の周りに多く寄生しています。魚が新鮮なうちに内臓を取り出してください。

※刺身で食べる場合は、じっくりよく見てアニサキス幼虫を除去してください。

アニサキスを死滅させるのに有効な手法

冷凍すること。または、加熱することです。

◯十分な冷凍
-20℃で24時間以上の冷凍する

※家庭用の冷凍庫は-20℃になりづらいので、48時間以上冷凍した方が良いと言われています。

◯加熱調理
中心温度が60℃で1分以上加熱する

どちらかの方法が推奨されています。

調味料では死滅しません

脂の乗ったサバが手に入ると「しめ鯖」をつくられる方も多いことでしょう。しかし、一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は簡単には死滅しませんので、ご注意してください。

食べてしまった場合には

高知大理工学部の松岡教授らの研究グループによると、「胃腸薬の正露丸を通常服用量溶かした液にアニサキスを30分間浸す処理をすると、ほぼ全てのアニサキスが運動を停止、24時間後には死んだことを確認した」という研究報告があります。

正露丸の主成分である木(もく)クレオソートが効くそうです。しかし、アニサキス食中毒になった場合は「病院に行くのが一番です」。病院に行けない状況でしたら、まずは正露丸(糖衣ではなく、茶色の丸いやつ)を試してみてください。

余談

少し話は変わりますが、生きた松葉がにの甲羅にヒョロリと細長い生物がついていることがあります。これは「カニビル」。甲羅についている黒いツブツブはカニビルの卵です。ヒルの仲間ですが、こちらはカニや人の体液を吸うわけでもなく、害はありません。熱に弱いので茹でたり、清潔なタワシでゴシゴシ擦れば、取り除けます。

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